漢方薬のはなし16 ~季節の変わり目に増える下痢~

漢方薬のはなし

獣医師の林です。

この「陽だまりしっぽ通信」では、当院で取り入れている漢方や、毎日の生活に取り入れられる東洋医学の考え方についてお話ししています。

 

 前回の話はこちらへ → 「漢方薬のはなし15 ~歯磨きを嫌がる仔への工夫~」

最近、診察をしていると、

「昨日から急に下痢をしています」
「便がやわらかい日が続いています」
「下痢と一緒に吐いてしまいました」

といったご相談が増えています。

季節の変わり目は、人と同じようにワンちゃんや猫さんも体調を崩しやすい時期です。

今回は、「下痢」について東洋医学の考え方も交えながらお話ししたいと思います。

 

下痢の原因はいろいろあります

犬や猫の下痢は、さまざまな原因で起こります。

たとえば、

  • 食べ慣れないものを食べた
  • フードやおやつが変わった
  • 食べすぎ
  • 急な気温の変化
  • ストレス
  • 細菌やウイルス、寄生虫
  • 胃腸や膵臓などの病気
  • 現在服用している薬の影響

などがあります。

一時的な下痢で元気や食欲がある場合には、短期間で改善することもあります。

しかし、下痢が何日も続く場合や、嘔吐、食欲低下、元気消失などが一緒にみられる場合には、単なる「お腹のくずれ」だけではなく、病気が隠れていることもあります。

 

 

東洋医学では「脾」が消化を支えると考えます

東洋医学では、食べたものを消化し、そこから体を動かすエネルギーを作る働きを「脾(ひ)」と表現します。

ここでいう「脾」は、西洋医学でいう脾臓そのものとは少し違い、胃腸を中心とした消化・吸収の働き全体を表す考え方です。

この「脾」の働きが弱っている状態を、東洋医学では「脾虚(ひきょ)」などと呼びます。

脾が弱っているワンちゃんや猫さんでは、

  • 軟便や下痢を繰り返す
  • 食欲にムラがある
  • 疲れやすい
  • 食べても太りにくい
  • お腹がゴロゴロする
  • 季節の変わり目に体調を崩しやすい

といった症状がみられることがあります。

特に、もともと胃腸が弱い仔やシニアの仔では、急な気温差や生活環境の変化をきっかけにお腹の調子を崩すことがあります。

 

 

「冷え」が関係する下痢もあります

東洋医学では、体が冷えることで胃腸の働きが低下し、下痢につながる場合があると考えます。

たとえば、

「冷房の効いた部屋で長時間過ごしていた」
「急に朝晩が涼しくなった」
「雨の日や寒い日に下痢をしやすい」

といった仔では、冷えが体調変化の一つのきっかけになっていることもあります。

秋は昼間は暑くても、朝晩は急に気温が下がる日があります。

人間でも季節の変わり目にお腹の調子を崩すことがありますが、ワンちゃんや猫さんも同じように気温差の影響を受けます。

 

お家でできること

胃腸が弱い子では、普段から次のようなことを意識してみてください。

 

① 急にフードを変えない

新しいフードへ変更するときは、今までのフードに少しずつ混ぜながら、数日~1週間程度かけて切り替えるのがおすすめです。

 

② 食べすぎに注意する

おやつや人の食べ物をたくさん食べた翌日に下痢をしてしまう仔もいます。

「少しだけ」の積み重ねが意外と多くなっていることもありますので注意しましょう。

 

③ お腹を冷やしすぎない

季節の変わり目や冷房を使用する時期は、寝床が冷えすぎていないか確認してあげましょう。

特にシニアの仔や小型犬では、床からの冷えにも注意が必要です。

 

④ ストレスにも注意する

お留守番、来客、旅行、ペットホテル、雷、環境の変化などをきっかけに下痢をしてしまう仔もいます。

胃腸とストレスは意外と深く関係しています。

 

漢方薬が選択肢になることもあります

下痢を繰り返す場合には、通常の検査や治療に加えて、体質に合わせて漢方薬を使用することもあります。

漢方では、同じ「下痢」という症状でも、

  • 胃腸の働きが弱っているタイプ
  • 冷えが強いタイプ
  • ストレスの影響を受けやすいタイプ
  • 水分代謝がうまくいっていないタイプ

など、その子の体質や症状によって考え方が異なります。

そのため、「下痢だからこの漢方薬」ではなく、その仔の状態を確認して選ぶことが大切です。

漢方薬だけですべての下痢を治療するのではなく、西洋医学的な検査や治療と組み合わせながら、その仔に合った方法を考えていきます。

 

こんな下痢は早めに動物病院へ

下痢をしていても元気があり、1回程度で治まる場合には様子を見ることもできます。

一方で、

  • 下痢が何度も続く
  • 嘔吐も繰り返している
  • 食欲がない
  • 元気がない
  • 血便や黒い便が出ている
  • 水のような下痢が続く
  • 子犬・子猫、シニアの仔
  • 持病がある

といった場合には、早めの受診をおすすめします。

特に嘔吐と下痢が同時に続く場合には、脱水が進んでしまうこともあります。

 

「いつものこと」と思わずに

「うちの子は昔からお腹が弱いから」

と、軟便や下痢をそのままにしてしまうことがあります。

 

ですが、繰り返す下痢には、その仔なりの原因や体質が隠れていることがあります。

西洋医学の検査で病気がないかを確認しながら、食事や生活環境を見直し、必要に応じて東洋医学の考え方を取り入れることで、体調管理のお手伝いができることもあります。

季節の変わり目は、ワンちゃんや猫さんのお腹の調子が変化しやすい時期です。

「最近、少し便がゆるいな」
「以前より下痢をすることが増えたな」

という場合には、どうぞお気軽にご相談ください。