漢方薬のはなし3 ~ 認知症の漢方薬 ~

漢方薬のはなし

獣医師の林です。

この「陽だまりしっぽ通信」では、現在当院で取り入れている「漢方薬」についてお話しています。

 

前回の話はこちらへ → 「漢方薬のはなし2 ~膵炎の漢方薬~

 

今回は高齢の仔の悩み、認知症(認知機能不全症候群)についてです。

 

漢方薬の使用例(2) 「認知症」

「認知症」とは加齢に伴う脳の機能低下によって、行動にさまざまな変化がでてくる病態の総称です。

 

犬の認知症の症状は、徘徊、旋回、夜鳴き、昼夜逆転、見当識障害、無関心、性格の変化、トイレの失敗など様々な症状があります。

 

これらの症状は、初期には気づきにくかったり一部の症状しか出てこないことも多いですが、徐々に進行することで日常生活に支障をきたすようになってきます。

 

代表的な症状の具体例を以下に示します。

 

  • 徘徊 (はいかい):

目的もなく歩き続ける

  • 旋回:

くるくると同じ方向へ回り続ける行動をする

  • 夜鳴き:

夜中に突然吠え出す、鳴き続ける

  • 昼夜逆転:

昼間はほとんど寝て、夜になると活発になり眠らなくなる

  • 見当識障害:

自分がどこにいるのか、今がいつなのかがわからなくなる

狭いところに入り出られなくなる

  • 無関心、無気力:

以前は好きだった遊びや散歩に興味を示さなくなったり、呼びかけに反応しなくなる

  • 性格の変化:

イライラしやすくなったり、攻撃的になったりする

  • トイレの失敗:

トイレの場所を忘れてしまったり、失敗が増えたりする

失禁や、歩きながら垂れ流すようになる

 

認知症は年を取るにつれて、どの仔にも起こりえます。

ただ夜の徘徊や夜鳴きなどが始まるとご家族は夜に寝れず困ってしまうことが多いです。

 

認知症の診断は、まずは認知症と似た症状を示す他の病気がないかどうかを確認します。

認知症自体は血液検査や画像検査では診断しきれません。そのためご家族から報告される上記のような症状があるかどうかが、診断には重要です。

認知機能を評価するチェックリストがあるので、それを利用し認知症の診断につなげていきます。

 

治療

認知症は人でもそうですが、現時点では治せる治療は確立できていません。

治療としては認知症の進行を遅らせる内服薬や、抗酸化作用のあるサプリメントがあります。

それらで認知症の症状が緩和されればよいのですが、既存の治療を行っても反応に乏しいことがあり、私たちは他にできることがないかと治療に苦心していました。

そこで新たな治療の選択肢として有効だと感じたのは、漢方薬です。

当院で処方する漢方薬は、「気」のめぐりを良くし、体にこもった熱を冷ますとともに、心を落ち着かせる作用があります。

そのため即効性はありませんが、既存の認知症の治療薬に加えることで夜の徘徊や夜鳴きの症状が緩和されることがあり、ご家族からも喜ばれています。

 

また当院ではドッグハウスクラブで高齢犬の日中預かりも行っています。

特に昼夜逆転の仔はドッグハウスクラブに預けてもらうと、様々な刺激を受けるので、昼間に寝る時間が減り、夜寝てくれるようになることも多いです。

日中預かり希望の方もお気軽に当院までご相談ください。

 

 

 

お知らせ

5月から始まったケアグルーミング×漢方薬の「skin care grooming」大好評です!

これから暑くなる時期なので、愛犬の被毛、皮膚の気になる方はぜひ「skin care grooming」をご利用ください。

詳しくはこちらの記事を参考にしてください。↓

skin care grooming」(スキンケアグルーミング)のお知らせ