漢方薬のはなし2 ~膵炎の漢方薬~

獣医師の林です。
この「陽だまりしっぽ通信」では、現在当院で取り入れている「漢方薬」についてお話しています。
前回の話はこちらへ → 「西洋薬と漢方薬の違いについて」
今回からは当院での具体的な漢方薬の使用例について紹介していきます。
漢方薬の使用例(1) 「膵炎」
漢方薬の前に、まずは膵炎についてどのような病気かをお伝えします。
膵臓は食べ物を消化する酵素や、血糖値を調整するホルモンを分泌する重要な臓器です。
膵炎とは、その膵臓が何らかの原因で異常をきたし膵臓自体を消化してしまい、強い炎症を起こすことで膵臓が正常に働かなくなってしまう病気です。
膵炎は「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分けられます。
急性膵炎の場合は、短期間で激しい症状を起こすことが多く、慢性膵炎では長期間において軽度な症状を繰り返すことが多いです。以下に急性膵炎と慢性膵炎の症状、原因、治療方法について簡単にまとめておきます。
急性膵炎とは
- 突然発症し、激しい腹痛・嘔吐・下痢・食欲不振などの症状が出る
- 腹痛がひどいときの症状として「お祈りポーズ」(前足を伸ばし、お尻を上げる姿勢)をとることがある
- 重症化するとショック状態や多臓器不全を引き起こす可能性がある
慢性膵炎とは
- 軽度の炎症が長期間にわたって続く状態
- 症状は断続的で、元気がない・食欲が落ちる・体重減少などの症状が見られる
- シニアのワンちゃんが発症することが多い
- 慢性膵炎から急性膵炎のような激しい症状が突然現れる「急性増悪」が起こることがある
膵炎の原因
はっきりとした原因は不明ですが、主に以下のようなことが関係していると考えられています。
- 高脂肪の食事や肥満
- 糖尿病やクッシング症候群などの内分泌疾患
- ストレスや薬剤の影響
- 人間の食べ物の誤食(揚げ物、チョコなど)
膵炎の治療法
- 点滴、吐き気止め、下痢止めなど対症療法が中心
- 症状が落ち着いたら、低脂肪の療法食で維持
以上が主な膵炎についての概要でしたが、ここで問題なのが膵炎は有効な治療方法が確立しておらず、出てくる症状に対して治療をする対症療法がメインということです。
急性膵炎の時は膵臓の炎症を悪化させないような注射治療があり、ひどい症状の仔には私たちもよくその注射治療を行っています。
ただ急性膵炎後の維持治療や慢性膵炎の治療に関しては、これまで膵炎対策の内服薬を処方することで維持をしていましたが、それでも症状が強い仔は再発を繰り返すので、「膵炎」は維持が難しい病気の印象がありました。
そこで新たな治療として用いているのが漢方薬です。
当院で膵炎の際によく用いる漢方薬は胃腸の働きを整え、炎症を鎮める作用があります。
そのため膵炎の既存の治療に漢方薬を加えることで、膵炎の症状が今までよりも抑えられやすくなりました。
また慢性膵炎のワンちゃんで血液検査での定期チェックをしている仔は、漢方薬を飲ませ始めてから、今まで高止まりしていた血液検査の数値が良くなってくることも経験しています。
特に最近では長生きするワンちゃんが多いせいか、慢性膵炎を持病に持つワンちゃんが増えてきています。
慢性膵炎と診断された後に食ムラや下痢・嘔吐を繰り返す仔には特に漢方薬はおすすめです。
うちの仔に漢方薬を試してみたいという方はぜひお気軽にご相談ください。
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